本好きの偏愛語りはじめました/「和菓子のアン」シリーズ

本好きの偏愛語りはじめました/「和菓子のアン」シリーズ

2021.4.9

はじめに(ご挨拶)

この文章はただの本好きが、独断と偏見で「面白かった本」「好きな本」をご紹介するものです。
内容にはかなり偏りがあり、ミステリ、ファンタジー、SF、純文、エンタメ(飯テロ系多し)・ラノベ・たまにノンフィクションなど。小説も漫画も好き。わりと節操なくなんでも読みます。
時流に乗り遅れるのが特技なため、流行り物はあまりご紹介できません。「今頃こんなの?」みたいなのもあるかもしれません。以上のことをご容赦いただき、ご一読いただけましたら幸いです。

「和菓子のアン」シリーズ

今回ご紹介するのは「アンと愛情」。「和菓子のアン」から始まるシリーズの3作目になります。
なぜ3作目からの紹介なのか?先日読んだばかりで記憶に新しいからです。感動はナマモノなので、シリーズ物は最新刊からお届けしてしまうのが癖です。

デパ地下にある和菓子のお店「みつ屋」でアルバイトをする梅本杏子、通称「アンちゃん」が主人公のお仕事小説であり、和菓子メインのお菓子系飯テロ小説であり、日常の謎系ミステリ小説でもあるという非常に贅沢かつ欲張りな人気シリーズ。漫画化されたりもしているので、ご存知の方も多いでしょう。連作短編集なので、時間があまりない方も気軽に読み始められます。

1作目「和菓子のアン」と2作目「アンと青春」は文庫化されているので、未読の方はコチラから読まれるのがオススメ!
※タイトルは「赤毛のアン」のオマージュですが、内容的にはあまり関係ありません。

注意!ここより少々のネタバレを含みます

まっさらな状態でこのシリーズに触れたい方は、今すぐバックプリーズ。
本屋さんや図書館に駆け込んで「和菓子のアン」を手に取りましょう。では、また次回!

 

 

 

いいですか?

 

 

 

 

 

 

 

いいですね?

このシリーズは、名探偵であり出来る女である美人(中身かなりオッサン)の椿店長やイケメン乙女の立花くん、可愛い女子大生だが元ヤン侠気の人・桜井さんなど個性的な面々に囲まれて、ぽっちゃりめの体型のせいか自己評価が少し低いけど素直で元気で可愛い「アンちゃん」が日々学んでいく姿が非常に微笑ましい。

アンちゃんは若い男ウケはしないかもしれないけど「息子の嫁に」とかオバ様方に言われるタイプ。初対面の人に警戒心を抱かれることはまずない女の子です。本人はそれをコンプレックスに思うこともあるようで内心いろいろ考えているようですが、それに共感する女性は多いような気がします。

しかし彼女の注意されたことは素直に聞き入れ、相手の思いや事情を汲んで寄り添う姿勢は本当に感嘆すべきものがあります。あまりにも純粋でキラキラしていて「汚れっちまった悲しみに…」などと口ずさみ中也化してしまいそうになりました。

人間あるていど年食っちゃうと、キレイなままではいられないんだよ…(遠い目)。

話がずれた。閑話休題。

 

和菓子がいとおしくなる

この作品の大きな魅力の一つはなんと言っても「和菓子」を始点とした日本の歴史と文化の知識
たった一つの和菓子の中にどれだけの手間がかけられ、どれだけの思いと物語が隠されているのかが、するすると紐解かれていくさまは毎度読んでいてワクワクします。
「おはぎ」の呼び方が何通りあるのかなんて全く知らなかったよパトラッシュ…!(※この知識は「和菓子のアン」に出てきます)

「アンと愛情」で出てくる和菓子は、どれもこれも魅力的。口の中でサラリとほどけて、どしゃりと御膳汁粉のような甘い液体に変わる上生菓子ってなんなんだ。巻き柿やぷるぷる通りこして「でゅるんでゅるん」のわらび餅、お煎餅や山椒餅などなど、食べたいものは挙げればキリがない。そして上生菓子はもちろん、それぞれのお菓子はほぼ全て「物語」と「歴史」を背負っている。そんなことを知ってしまったら、昔食べたことがあったり、日常的に食べていたりしたあの小さなお菓子にが急にいとおしくなったりするから現金なものです。

謎解きと学び「わかった!」の喜び

もちろん日常の謎系ミステリですので、和菓子の話だけではありません。一話一話に謎掛けがあり、それを解いてゆくのがアンちゃんをメインにした「みつ屋」の面々。そして謎はたいていお客さんが持ってきてくれます。

・宇宙がモチーフの和菓子で1月に出るものは?
・「懸想文売り」という昔の代筆業者はなぜ烏帽子、水干でさらに布覆面までして顔を隠していたのか?
・充分作り直せる余裕があるのにお店のパンフレットが古いままなのはなぜか?
・一般的な「透明なわらび餅」を買って行ったら「二重に間違っている」と言われたのはなぜ?
・「お煎餅」はお米が原料でしょっぱいもの?
 小麦粉で作った甘い玉子せんべいなどは「お煎餅」ではないのか?

などの謎に人間関係が絡んで魅力的な物語を描き出す、その手腕はさすがの一言!

なかでもお煎餅の謎が解ける「かたくなな」という短編では、お煎餅の歴史から始まり、後世に残ってゆく文化と歴史の狭間に消えてしまう同じくらい貴重な文化の差について考えさせられます。調べれば調べるほど大もとは中国や韓国にたどり着くことが多い中、「日本独自」の文化とはなにか、ということにも思いを馳せるきっかけにもなります。

そして「お煎餅」の歴史を調べるアンちゃんが得た「学ぶことの楽しさ」に関しては、誰にとっても大きな気付きではないでしょうか?言葉にすれば他愛もない、ともすれば陳腐なものかも知れませんが、アンちゃんの学びを追体験しているとスッと腑に落ちる心地がします。
なんとなく大学に通ってなんとなく学んでいた過去の自分に教えてやりたい。「読め!読んで知れ!学べる時間ってのはものすごく貴重で面白いものなんだ!」と胸ぐら掴んでふりまわしたいところです。まあ、今からでも遅くはないのかも知れませんので、未来の自分に胸ぐら掴まれないようガンバリマス。

いつまでも変わらないものなんてない

長い歴史を超えて残っているものも変わらないものはなく、少しずつその有りようは変化しています。同じようにシリーズのキャラクターたちも不変ではいられません。
次作では少しだけ顔ぶれが変わるのかな…。

一つの和菓子の向こうには、人を恋うる気持ちや亡き人を想う気持ち、嫉妬なんかの醜い気持ちも隠れている。でもどの気持ちも長い歴史の中で昇華されて、綺麗で甘いものに変わるのかも知れない。

そんなことを思いながら、本を閉じて和菓子をほおばった。

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